真夜中01:「あっという間の日々」
突然だが、僕は二十代の終わり頃から三十路に入るまでの一年数ヶ月、エロ本屋でエロ本やエロDVDを作っていた。
出版社や広告屋でのクリエイティブな仕事に憧れながら、日々口を糊するため替えの効くくだらないアルバイトのような仕事にいた頃、自分が三十路になるなんて考えてもいなかったその当時。
人に誇れない仕事をすることにほとほと嫌気がさした僕が、三十路を目前にさらに人に誇れない(しかも落ち目もいいとこの)エロ本出版社に就職した詳しい理由については追って説明したい。
とにかく、僕は二十代の終わりをAV業界の最先端で過ごしたのだ。
今年で33歳になる今、当時を振り返る。
余談だが、33歳という年齢は僕にとって、良くも悪くも人生の軌道をおかしな方向に持っていってくれたアーティスト「hide」が事故死した年齢でもあり、人生において大きなターニングポイントであると感じている。
...もとい、現在では広告屋で名ばかりのディレクターを勤めている僕がエロ本屋の当時を振り返る。
当時僕が一緒に仕事をした、同じ会社の同僚やセクシー女優(AV女優)のほとんどが今ではもう現役の一線にはいない。
僕を含め、矢面にたっている当の女優本人でさえほとんど数年でメンツが入れ替わっている。
野良猫と一緒で、なんとなく近所で見かけて知ってはいるものの気が付けばいなくなっており、別の似たような、かつ区別が付かないおんなじような奴が前任者と変わらないことをやっている。
自分のエロ本屋のキャリアを振り返り、その繰り返しのような気がしたのだ。
だがこの構図は、なにもエロ本屋業界だけではないのではないかとふと思った。
我々が今している仕事や人生、恋やプライベートも、安易に替えが効き別に自分じゃなくても全然何も問題ないことでしかないのでは。
現代に生きる全ての人は、別に誰でもいいしどうでもいいことに必死になっているのでは。
ネット上のオークションサイトで、当時一緒の仕事をしたAV女優の名前を検索する。
ほんの数年前なのに、彼女たちが出演したDVDは投げ売りの190円とかで十把一絡げに転がされている。
華やかな世界に目がくらみオトナにだまされ、失ってはいけない最低限の人間の尊厳を金に換えた若い女どもの末路が死屍累々と転がっているのだ。
回転が速い業界で一年ちょっとしかいなかった僕ですら、そう感じている。
生きてくとか、仕事するとか、マジもう意味わかんねー。
話が飛躍しすぎたが、このブログを始めようと思ったきっかけはこれ。
毎日行きたくもない仕事に行き、誰がやっても実はどうでもいい業務をさも自分しかできませんみたいにやり、気づけば他の誰かが自分に変わっておんなじことやってる毎日。
こんなことのために嫌な想い積み重ねて生きてんだっけ?
別にがんばる必要なんて本当はないんじゃない?
っていうか、自分って何?何のために何がしたくて毎日こんな嫌な想いばっかして生きてんだろう。
数年前のエロ本読んで、そんなこと思って
「毎日毎日本当にもうくっだらねーし別にがんばるのオレじゃなくてよくねーか」
と感じつつも、明日の仕事に備えてしまう自分だけのために「自意識の確認と浄化」を目的に始めてみる。
広告屋のくせにネットリテラシーの低い自分なので、質の保証はできないが、偶然どっかからとんできてここを見た同じような気持ちの方が同調してくれるような私情を垂れ流したい。
毎日必死に生きている三十路の男の気持ちを、ちょっとずつ形にできれば幸いである。
...これ、客観的に人に伝わるのかな。
まあ、いいか。後に自分が読み返すためくらいの気分でスタートしてみようかな。